2023年冬アニメ1話感想。
オタクたちと定期的にオンラインアニメ上映会をしているので備忘録的に記録していきます。とりあえず1話段階での2023年アニメの感想です。
今期はポストモダンというか、脱中心的というか、非線形のアニメが多い印象でアニメがマジでわからなくなってきたので、理解するための手段としても記録・言語化はちゃんとやっていきたい。
- 1. ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん
- 2. 老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます
- 3. お兄ちゃんはおしまい!
- 4. もういっぽん!
- 5. テクノロイド
- 6. 犬になったら好きな人に拾われた
- 7. トモちゃんは女の子!
- 8. お隣の天使様に駄目人間にされていた件
- 9. 氷属性男子とクールな同僚女子
- 10. 異世界のんびり農家
- 11. 最強陰陽師の異世界転生記
- 12. 解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ
- 13. Revenger
- 14. ツルネ
- 15. 冰剣の魔術師が世界を統べる
- 16. 転生王女と天才令嬢の魔法革命
- 17. 齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定
- 18. 久保さんは僕を許さない
- 19. あやかしトライアングル
- 20. Buddy Daddies
- 21. 英雄王、武を極めるため転生す
- 22. とんでもスキルで異世界放浪メシ
1. ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん
作品構造が異常に複雑で脚本のテクニカルさが際立つアニメ。ハイゼンベルクの不確定性原理を物語に落とし込んだのか? 見ればわかるのだがあらすじを書くのがかなり難しいので見てください。「悪役令嬢ものゲーム異世界」に介入する「青春ラブコメ」にまた別方向からの介入や観察が入り多元的な物語の推進力が視聴者を上下左右未来過去からぶん殴ることになる。『はめふら』から更にメタ構造かつ青春ラブコメを足したような作品。
「令和のアニメは引き算を知らんのか」との声がオタクたちから上がったが、制作は老舗の手塚プロダクションで、脚本は『うる星やつら』『おにいさまへ……』からのベテラン・金春智子、演出は1960年代から虫プロやサンリオ映画で活躍してきた波田正美、監督も『ジャングル大帝』(新版)『おにいさまへ……』『ブラックジャック』に参加していた吉村文宏など、アニメ業界の古参スタッフがクレジットに並んでおり昭和から令和を貫くアニメ文化史を感じさせる。
上記のイカれた物語構造にヒロインのリーゼロッテ・リーフェンシュタールさんも普通にツンデレヒロインをしているので視聴継続する。
2. 老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます
不幸が続いたあとに不慮の事故で異世界転生して……というイントロは異世界転生の一般的なそれだが、転生先の世界と生前の現実世界を往復できる能力があるのが作品中のギミックになっている……と思わせておいて、一番おかしいのは作品全般に沈殿する思想だろう。ヒロインの異常なタフネスさや行動原理は明らかに共感できるものではなく、最も重要であるはずのタイトルにある目標を設定するまでのロジックは何一つわからなかった。イントロから異世界転生した先の世界観や事件から出発するモチベーションではなく、唐突にゼロから始まる目標設定が視聴者を不安にさせる。何もわからないまま作品のモチベーションが決定されて「俺は何を見ていたんだ?」と見終わったあと茫漠とした不安感に襲われた。不安定な基礎の上につくられた家に住むような興奮がこのアニメにはある。視聴継続。あと軍事考証がいるの何?略称「ろうきん」は普通にやめた方がいいと思う。
3. お兄ちゃんはおしまい!
今期はアニメで恐怖することが多い。引きこもりでアニオタの独身ニートである主人公が天才的な頭脳を持つ妹に薬を盛られて少女の身体に変えられるといういわゆるTSもの。キャラデザはあらゐけいいちを思い出させるデフォルメの強いそれなのだが、異常性欲が強すぎて主人公の身体を描くときにやたらとリアルな幼女趣味的な作画が顕現し、そのコントラストに恐怖は絶えない。監視カメラを理由とした俯角・仰角・パースに凝ったカメラワークも怖いし、令和のこの世にカジュアルにジェンダーを反復横跳びする価値観もひやひやする。最も根源的な恐怖を感じさせるのはエンディングアニメーションで、カメラの中に存在するありとあらゆるものを動かそうとするアニメータの強い信念を通り越したリビドーだ。これを毎週見せられるのかと思うと脳が髄から恐怖のアラートに震える。視聴継続。
4. もういっぽん!
女子高生×柔道部活もの。柔道だからかキャラデザが全体的に丸く、刺さる人には刺さるだろうなと思う。突拍子もない演出やキャラクターを入れることはないストレートなスポーツ部活ものだが、まだ一話だと具体的な目標が見えてこないので地味な印象を受けてしまう。アニメ作品としてクオリティは安定しそうなので今後の展開に期待したい。
5. テクノロイド
『戦姫絶唱シンフォギア』『ヴィジュアルプリズン』の上松範康がプロデュースする女性向けアイドルアニメ。東京の半分が水没し、労働の大半をアンドロイドが担う未来世界を舞台に、主人公のアンドロイドたちが人助けをしつつ芸能活動で評価される天空闘技場みたいなタワーでアイドルのトップを目指していく話。上松作品なので世界観・キャラクター・構成がイカれていることに恐怖はしないし、むしろ安心できる。突拍子もないSF世界観とアイドル活動の組み合わせは2022年最高傑作アニメ『Extreme Hearts』を思い出す。
6. 犬になったら好きな人に拾われた
性欲アニメ。主人公が突然捨て犬に転生してクラスのヒロインに拾われてラッキースケベを体験する、というコンセプトらしいが、ヒロインがやけに犬に性的なアピールをしてくるところがなんだか怖い。こういうホラー映画あった気がする。
7. トモちゃんは女の子!
ボーイッシュなヒロインが幼馴染の男子高生に女子として見なされず思春期的悩みをどうこうというコンセプトのラブコメ。こういうラブコメ漫画を中学生のときにスクエニ系の漫画雑誌で読んでた気がする。たぶんガンガンウィングでやってたと思う。と思ったらこれ星界社なんだ。主人公と幼馴染のラブコメはシンプルで型通りなのだが、主人公よりキャラ付けが重く複雑な友人が関与することで作品全体の複雑性が向上しており、「このアニメわからない」が発生する。幼馴染と友人の関係性が重すぎて主人公が負けヒロインみたいなポジショニングになっており、わからない。わからないので視聴継続。最近のアニメ難しすぎないですか?
8. お隣の天使様に駄目人間にされていた件
なろう発でGA文庫で書籍化された青春ラブコメ小説が原作。男子高校生の主人公が学校の美少女にある日偶然傘を貸したことをきっかけに、食事をつくってもらったり家の掃除をしてもらったりすることになる、というのがコンセプトだが最初から主人公が駄目人間な気がしないでもない。ヒロインがつくる料理が筑前煮や肉じゃがなどやけに渋い。こういうワンコンセプトのラブコメはワンクール保つのかという不安がついてまわる。それはそれとしてどことなく2000年代のギャルゲ原作の空気がある、その原作ギャルゲだとヒロインは既に死んでいて物語の終盤でそれが明かされて墓参りに行くラストシーンがあった気がする。
9. 氷属性男子とクールな同僚女子
SNSにあるワンイシュー漫画っぽいなと思ったらpixiv発の漫画が原作で、現在はガンガンpixivに連載中とのこと。こっちがスクエニ系だった。雪女の末裔で緊張すると周囲に冷気や吹雪を発生させてしまう主人公と会社の同僚で表情の変わらないクールな雰囲気のヒロインとのラブコメアニメ。突拍子もない世界観・ギャグに「尊い」ラブコメ展開、絵の雰囲気も柔らかめで個人的には安心して見られる枠になる。一方で原作が掌編漫画だからそうなるのだがショートショート集になり、かつワンイシューなので、こっから作品全体の軸をマンネリさせずにどう構成するのかが不安ではある。15分アニメでもよかったんじゃない?と思うが脚本の金春先生に期待。それはそれとして気を抜くと狐の耳と尻尾が生えてしまうハイテンションOLはかなり攻撃力が高い。
10. 異世界のんびり農家
農業舐めんな。テクニカルな作品が多い今季アニメの中で解釈のための体力を使わない貴重なアニメ。
11. 最強陰陽師の異世界転生記
平安時代の日本の陰陽師がヨーロッパ風の異世界に転生して……というかなりテクニカルな構成のアニメなのだが陰陽道の解釈が独自すぎて上記のコンセプトがまるでわけのわからないものになっている。
saikyo-onmyouji.asmik-ace.co.jp
12. 解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ
13. Revenger
ニトロプラスの虚淵玄が原案・構成の時代劇もの、というか必殺仕事人。テクニカルな作品が多い今季の中で正方向の物語をやっておりもはや古典的な印象さえ受ける。線形の物語って平成までらしいです。
14. ツルネ
京アニの弓道部活アニメ。1期やって劇場版やってのあとの2期で前作は見てませんでした。男子高校生の半裸をこんなに性欲丸出しで描いていいわけがないだろ。ちゃんと見れば丁寧な青春スポーツアニメなんだろうなという確信がある。でも対戦相手と直接バトルするわけじゃない弓道は難しそう。
15. 冰剣の魔術師が世界を統べる
漫画の『マッシュル』みたいな話?タイトルの読み方もよくわからず、作品のコンセプトもよく分からなかった。作画もなんだか気の抜けた印象が否めない。Bパートのギャグみたいな演出をもっと走らせると面白くなりそう。
16. 転生王女と天才令嬢の魔法革命
キャラクターの造形を『リコリス・リコイル』に引っ張られすぎてない?これもキャラというか作品のモチベーションがどこにあるのかパッとわからなかった。あとこれ百合なんすか。もう俺アニメ向いてないかもしれん。
17. 齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定
人々から恐れられる老ドラゴンが実は草食系の心優しいドラゴンだったという勘違いコメディ。bilibili動画とKADOKAWAの制作でスタッフとスタジオは中国がメイン。ほんわかした画の雰囲気がよい。ただコンセプトは面白いがギャグ・コメディのパンチが一話時点では中途半端。良い意味でだらだら見るくらいがちょうどいいかもしれない。
18. 久保さんは僕を許さない
not for me。周囲になかなか気づかれない体質の主人公と、クラスで唯一主人公に絡んでくる女子生徒・久保さんの日常系コメディ。久保さんに弄られることが作品のメインコンセプトだが個人的には久保さんの絡み方ががいじめの構図にしか見えず、視聴はちょっと難しいと感じた。『イジらないで長瀞さん』とか『からかい上手の高木さん』とかと同じジャンルらしい。
19. あやかしトライアングル
矢吹健太朗原作の漫画のアニメ化。最近はアニメでオタク向けの性欲描写を見ることが多かったので矢吹漫画の少年漫画的な性欲描写がやたらと懐かしく感じたというかこれって平成レトロじゃない? それとTS本当に流行ってるな。
20. Buddy Daddies
もうP.A.worksは『アキバ冥途戦争』で仕事の定義を見失ったらしい。殺し屋二人組がある仕事がきっかけで少女の親代わりをすることになるというのが作品の軸だが、『スパイファミリー』の後追い感は否めない。ちょっと導入の演出・ロジックが雑、ルパン三世を薄めたような作品の雰囲気もパンチ不足が否めない。難しいね。
21. 英雄王、武を極めるため転生す
ファンタジー中世な世界で国を打ち立てた英雄が武道と戦いを求めて異世界に転生したら少女に転生してしまって……というあらすじ。これもTSもので恐ろしいよほんと。それから異世界から異世界に転生することあるんだ。幼女が突然剣士たちを倒したら双方メンツ丸つぶれでは。あと剣術と魔術の組み合わせは卑怯らしいがそのラインがこっちはよくわからん。悪くはなさそうだかよくもなさそうという印象。
22. とんでもスキルで異世界放浪メシ
異世界転生したら外れスキルだったが実はそれがチートスキルだった系。サラリーマンから転生した主人公は異世界でイオンのネットスーパーが使えてお金を払えば好きなときに好きな商品を取り寄せることができるという、かなりぶっ飛んだ設定で初見インパクトがでかすぎて良い。スキルを使って何か大きなことをしようとせずに真面目に異世界ファンタジー世界を冒険しようとしているところやキャラクターたちが真摯にそれぞれ自分の役割を全うしているところ、何より実在の企業名をちゃんと許可取って使用しているところが好印象だった。視聴継続。