Besteh! Besteh!

印象論で何かが語られる。オタク、創作、時々、イスラエル。

バイクの免許を取得した話

はじめに

 つい先日バイクの卒業検定に合格し普通二輪に乗れることになった。

 厳密に言えば免許センターで免許の更新手続きをしないといけないのでまだ免許を取得したわけではないが、とりあえず免許の発行自体は確定したといっていいだろう。

 

 この記事では、週末に川沿いを散歩するかアニメを見るか、あるいはなんか文章を書くかしか趣味がないアラサー社会人オタクがどのようにして普通二輪免許を取得するに至ったかを、とりあえず個人的な振り返りとして記録するともに、もしこれから普通二輪免許を取得しようとする人がいたらひとつのケースとして参考にしてもらえればという今ここで思いついた目的に沿って紹介していきたい。

 

 なお、マジの初心者が卒業検定に合格したレベルの話なので、自動車やバイク好きの人からしたら「んなんあたりめーだろ」と思う部分もあると思うが、どうかご容赦いただきたい。テメーに容赦されたところでこっちは何も思わねーけど。

 

免許取得の動機/自民党と自動車の王国・群馬から来た男

 とりあえずモチベーションは大事だ。

 当初の動機としては行動範囲の拡大のためで、より具体的に言うと東京・神奈川エリアから少し離れて移動する際の足としてバイクを取得しようと思ったのだった。2年前に北関東を一人で旅行した際に、鉄道とバスを乗り継いで行ったのだが、目当ての旅館や温泉そのものは良いとして、それ以上に何か行動しようとすると何かしらのエンジンを持った乗り物が必要であることに気づく。ちょうど旅館の周りを散歩しているときにツーリング中のバイクを見て、「あれええなあ」と思った瞬間は決定的だった。

 地元・群馬を離れて10年近く経っているのですっかり忘れていたが、日本は車社会である。北関東の温泉や旅館に限らず日本の社会・経済・産業そのものが物質的にも機能的にも自動車に深く依拠しており、既に自動車という存在は日本国民のアイデンティティに深く関わる象徴的存在である。そして、北関東・群馬出身者である俺にとって自動車という存在はそうした象徴的な次元に加えて実存的な問題にも関わっている。車を趣味にしていた親父はガソリンスタンドで働いているときに母親と出会い、二人とも中古車販売業で金を稼ぎ、俺というガキを育てていたわけで、俺の人生の基礎部分はガソリンと中古車で成り立っているといっても過言ではない。俺はその事実を絶望的なまでに忘却しており、俺は民族的アイデンティティを喪失していることにも気づかないままヒップホップと殺人と愛の街・川崎でディアスポラに苦しむ放浪の民と化していた。俺は北関東の民としてアイデンティティを取り戻さなければならない。この歳になるまで国道17号・18号、関越自動車道を自分の車で走っていなければ自民党と自動車の王国・群馬県出身者を名乗る資格はないように思えた。

 じゃあ車買えよ、もう免許(AT限定)もあるじゃねーかよ、と思うのだが車は大きくてなんかめんどくさそうなのでバイク免許を取ることにした。ペーパードライバーだし、誰か他人を乗せる予定もなければ車で細かい道走るの嫌そうだし。そんくらいの感覚である。俺は時々両親への罪悪感に苛まれることがある。

 

入校手続/MTで取るかATで取るか

 幸いにも近所に教習所があったのでそこに通うことにした。入校にも予約が必要だというので電話して予約するも、「当日の入校手続きには運転免許証と免許証のパスワードが必要です」と言われて「運転免許証のパスワード?????????」と混乱するが、ありがたいことに本籍地の記載がある住民票を添えればパスワードは不要だと言われたので当日は堂々と自動車と自民党の王国・群馬が本籍地として記載された住民票を提出した。

 一般的なカレンダーという誰かが決めた秩序にしたがって働いている社会人なので当たり前だが教習には土日祝日と休日に合わせて通うスタイルになる。教習所もそういう社会人向けのコース・スケジュールを用意しており、とりあえず土日に予定が入ることもない独身オタクはさっさとフルに教習予定をぶち込んでスケジュールを完成させた。なお、自分が入校した際は「教習生が多い」との理由で学校が用意している一番自由なスケジュールコースは選べず、一定の段階ごとにスケジュールを決定するコースとなった。スケジュールは教習所のホームページからスマホでポチポチ予約したりキャンセルできたりするのでかなり手軽な印象だった。

 ちなみに料金は16万円強。ここ数年間散歩とアニメしか趣味がなかった俺にはカスみたいな金額である。俺は強い。

 

 ただし、入校するにあたって少しだけ悩んだポイントがあった。マニュアル免許かオートマ限定か、という問題である。恐らく自動車やバイクが好きな人間なら迷わず前者を推すと思うのだが、個人的にマニュアル免許に対する微妙な忌避感があり、半分オートマ限定に傾いているところがあった。

 微妙な忌避感とは何かというと「なんで数十キロのスピードで走る二輪に跨りながら手足でガチャガチャ操作しなきゃなんねーんだよ。あぶねーだろーが」という思考が割とあったのと、免許取ったら乗りてーなと思っていたのが当初はホンダのフォルツァPC160のようなビッグスクーターであったこと、それから人生で何度か「AT限定免許はダサい」という一種のマニュアル免許所有者によるマウントを経験し(自動車と自民党の王国・群馬ではよくある)、逆張りオタクなのでマニュアル免許に対する嫌悪感とまでは言わないが一種の抵抗感があったことが理由として挙げられる。

 しかし、結論としては汎用性などを考慮したり経験者からのアドバイスに従ってマニュアルで免許取得し、この選択は間違いではなかったなと振り返ってみて思う。理由としては複数あるが、とりあえず一番に言えることは「教習の難易度はマニュアルの方が低い」ということだ。どういうことかというと、低速時の安定性はマニュアル車の方が高いので、教習コースの各課題である一本橋スラロームS字・クランクの難易度はオートマに比較して低い。また、教習を受けて初めて知ったがマニュアル車クラッチを繋げるとアクセルなしに勝手に微速で進む(普通AT自動車のクリープ現象と同じ感じ)。このため低速・微速ではアクセルが不必要なので上述の各種課題でアクセル操作が省略されたりする。

 逆にオートマ車は初心者にとって低速の微妙な調整が難しく、かつニーグリップ(膝で車体を挟んでバイクを安定させる技術)ができないので、低速でのコントロールが一番に要求される教習コースが走りづらい。マニュアル車の課程の中でオートマ車の体験乗車があるが、上述の理由で最初の乗り出すときにかなり苦労した思い出がある。

 上記の他にもバイク市場は圧倒的にマニュアル車がメインであることなどを考えると、マニュアルで取得した方がオートマ車がメリットが大きいと考える。

 ただし、あくまでこれらは個人的な経験に基づく話なので、最初から「特定のスクーターに乗りたい」「あくまで通勤用に二輪の免許を取得したいのでマニュアル車に乗る予定はない」などの考えがあればオートマ限定でも構わないと思う。教習に使われるオートマ二輪もホンダのシルバーウィングで、初心者からするとバカでかい上にバカ重いし、上述の通り教習で苦労することもあるかもしれないが、免許取得していきなり400ccクラスのスクーター乗る人ってそんないねーだろ。そもそも市場に400ccクラスのスクーター自体があまりないしと思わんこともなくはない(もちろん普通二輪免許を取得するにあたって区分上最大排気量である400ccで教習を受けることが重要なのはわかるが、そういう現実とのギャップも一方ではあるだろう)。

 車種についてもマニュアルに比較すればオートマは当然選択肢が限定されるが、通勤やビジネスなどの街乗りに最適化されたものもあれば、250cc以上の排気量で遠出やツーリングに適した車種もあるわけで、デザインもフォルツァとかBMWC400GTとかスポーティでかっこええやんと思う。あと乗り物として重要な積載量やユーザーフレンドリーさを求めるならスクーターでもというかスクーターの方が全然ええやろ。なんでわざわざ不便なMT乗らなあかんの。

 そんなわけで、「色々考えたけどオートマ限定で免許取得するよーん」という人がいれば個人的にはその決定を応援したい。気に入らなかったらあとで限定解除すればええ。

 

2BK-MF13 2018年式 フォルツァの諸元・スペック情報 | ウェビック (webike.net)

フォルツァかっこいいよフォルツァ

おわりに

 どうでもいいがアラサー独身男性がバイク免許取りに行くの「本当にコイツ独身人生決めに入ったな」というソリッドな感触がある。

 

 次回、技能教習編。捕まえることのできない妖精のようなニュートラルギア、消えることを知らない不滅のウインカー、それから俺今何速で走ってるんだっけ? 教官の優しさと気遣いが春先の雨のようにアラサー独身男性の心に沁みるぜ。(次回はありません)