Besteh! Besteh!

印象論で何かが語られる。オタク、創作、時々、イスラエル。

2021年サークル活動の総括

 シャツを着るのも鬱陶しいほどクソ暑い夏が一瞬間にして惨殺されたかと思えば瞬きと驚きの間隙に秋も初秋も晩秋もその色彩のかすかな濃淡を楽しむ間もなく鏖殺されてしまい厚いコートを着込んでは出勤の満員電車でサラリーマンという集合的で自我を持たない生物が汗まみれに汚れまくって都市を汚す肌寒い季節となっております今日この殺、如何お過ごしでしょうか。

 

 日頃より同人サークル・Juken/現代日本猶研をご愛顧いただきまことにありがとうございます。

 

 先月11月23日に開催された第三十三回文学フリマ東京への参加を持って、Juken/現代日本猶研の2021年の即売会参加はすべて終了しましたので、誰も気にしてねーとは思うが今年の活動の振り返り、記録としてここに活動報告を掲載させていただきます。

 

 読まれなくても、こういうのは記録に残しとくことが大事なんだよ。

 

 

1.新刊の制作

 2021年は新作を2作刊行しました。2019年、2020年と2年続けて完全新作を頒布することができていなかったので、2作も出せたことに安堵しています。

 下記に、本年に頒布した新刊2冊についてご紹介します。

 

(1)Phototaxis Pixies Os Canibais

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『Phototaxis Pixies Os Canibais』


 今年1作目は5月に新刊とした『Phototaxis Pixies Os Canibais』でした。本来2020年年末開催予定だったコミックマーケットC99に合わせて制作していたものでしたが、同イベントが新型コロナのため中止となったことで、約半年ほど遅れて、2021年5月の第三十二回文学フリマ東京から頒布したものとなりました。書き終わったのは2020年の夏頃だったのに。

 本作はこのサークルが2015年頃から続けているユーゴスラヴィアと現代史に魔法少女、百合、SF、バイオレンスなどの要素を組み合わせたノベルスシリーズ『Phototaxis Pixies』の三作目になります。

 特に本作は百合とバイオレンス、それからスピード感のある文体にチャレンジした作品でした。書き始めた頃に古川日出男の『ベルカ、吠えないのか?』を読み、「これだ!」と興奮したことを覚えています。『ベルカ』で気に入ってるのはその切れ味のある文章もそうですが、それに加えて文庫裏表紙の紹介文にも載っている「エンタメと文芸の幸福なハイブリッド」というコンセプト。前から目標にしていたことではありますが、『ベルカ』やその他の古川作品、またそこから三島由紀夫賞作品に手を出して読書の幅を広げられたことは、拙作にも多少なりとも良い影響を与えていたかと振り返られるでしょう。

 同時に作品を書く上で取り組みたいテーマとしていたのは物語の「個別性」というか、「どうでもよさ」でもありました。タランティーノの『パルプ・フィクション』や『レザボアドッグス』みたいに、「どうでもよさ」が物語的に機能する作品に憧憬みたいなものを感じていて、これをどう表現しようかなと思ったときに、「歴史という全体性」と「キャラクターたちの関係という個別性」のコントラストに落とし込もうと狙った(撃ち抜いたかどうかは、ともかく)のがこの作品のテーマ、というほどのものではないですが、作品を貫くモチベーションだっかなと思います。

 タイトルを拝借したマノエル・ド・オリヴェイラの『カニバイシュ』もそのモチベーションを生む上で、また作品のモチーフを考える上で非常に影響を受けた作品です。この映画のラストがめちゃくちゃ好きすぎる。

 在庫がまだあるので今後もイベントで既刊として頒布していく予定です。

 

 本作は早川書房が主催する第九回ハヤカワSFコンテストに応募し、一次選考通過、二次選考で落選という結果になりました。そのことに関する反省というか振り返りみたいなものはまた別の記事でやっていますので、興味ある方はご参照ください。

 

j-makino.hatenablog.com

 

(2)Phototaxis Pixies strange lovers

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『Phototaxis Pixies Strange Lovers』


 2作目は9月にCOMITIA137にて新刊として頒布した『Phototaxis Pixies Strange Lovers』でした。

『Os Canibais』はバイオレンスに寄せた湿度高めの作品でしたが、こちらは爽やかさを狙った作品で、かつモチベーションとしても「全体と個別のコントラスト」であった前作から転換して「全体と接続する個別性」を一つのテーマに書いた作品です。

 このスタートラインについては、このブログにも以前掲載した「全体について考えている」に書いたほか、同記事をもう少しリファインして評論サークル不毛連盟様の『ボクラ・ネクラ 第三集』に掲載した「わたしたちは何も大丈夫ではないです」でももう少し書かせてもらっています。また、「わたしたちは何も大丈夫ではないです」は上記『Strange Lovers』にも収録してします。

 

j-makino.hatenablog.com

 

 上記の記事を読むとわかりますが、作品のコンセプトになったのは音楽、とりわけ春ねむりや不可思議/wonderboyといったポエトリーラップ・リーディングでした。アルバム『春と修羅』、『sayonara,』はマジの名盤なので聞いてください。

 全然作品の話してないけど、こちらもまだ在庫あるので気になる人は読んでください。通販もしてるし、pixivでも全文無料公開してます。

 

juken.booth.pm

2.会計報告

(1)収支について

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 赤字です。

 

支出について

 2021年は5月の第三十二回文学フリマ東京、6月COMITIA136、9月COMITIA137、11月第三十二回文学フリマ東京に参加しましたがイベント参加費用は24,800円でした。

 印刷費は新刊2冊に26,090円、合計して50,890円でした。交通費だとか事務消耗品費だとかはカウントしてません。

 

②収入について

 各イベント及びBOOTH通販での売上は合計25,272円でした。1冊500円なので販売部数はだいたいわかるかと思います。

 

 というわけで収支は▲25,618円となっています。印刷費は回収できるかと思ってましたが、ダメでした。

 

 なお、売上金の25,272円のうち25,000円は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に寄付される予定です。残りの272円で俺はビールとつまみを買う。

www.japanforunhcr.org

(2)価格設定について

 新刊2冊とも価格は500円(BOOTHでは600円)として設定しています。完売すると印刷費は回収可能だがイベント参加費用は???というくらいの価格です。つまり採算は度外視で、ある程度多くの人読んでくれねえかな、あるいは文芸同人の相場を破壊してえなと思って以前からこの価格設定にしていましたが、あるイベントで参加者の方に「この価格なら買ってやるか(意訳含む)」みたいなことを言われたのと、より多くの難民を救うために来年から新刊は(コストにもよりますが)1,000円にします。

 買われることと読まれることは違うのと、ある種の肯定感と、コストの回収と、それから小銭を準備するのがめんどくせえんだわ(既刊はこのまま500円で頒布します)。

 

3.2022年の計画

(1)同人誌の制作について

 現行の『Phototaxis Pixies』シリーズの完結を目指します。現在最終巻を制作中で、これを2022年秋までに頒布したいと、別に明確なガントチャートがあるわけではないのですが、やっていっています。

 その他、できれば短編・中編の一次創作ができれば。また、言うだけタダなので今までに出した『Phototaxis Pixies』シリーズをまとめた愛蔵版みたいなやつでも出せたら? みたいなこともアイデアとしてはあります。そんな体力がお前にあるのか?

 

(2)参加イベントについて

 新型コロナの感染状況にもよるので確定はしていませんが、例年通り春頃からの活動を計画しています。文フリ東京とコミティアからスタートしようかと思います。

 一方で、毎年同じイベントに参加しているとマンネリ化しそうなので今年は地方の即売会にも参加したいと考えています(それもコロナの状況が許せばではありますが)。とりあえずは北海道や東北、あるいは中京地域へのイベント参加をしたいなあと漠然と思考中。あと群馬の文フリ前橋とか。地方開催を推進して全国的にクリエイターに表現の場を用意してるコミティア文学フリマは普通に偉いと思う。

 一度コミケで現行シリーズの一部を頒布しているので、最終巻出すときはコミケでも頒布したいなと思っています。恐らく冬コミ。また、それをもってコミケへのサークル参加は一旦休止する方向で行きたいと思います。コミケの理念と実態がおじさんよくわかんなくなってきたので。

 

4.最後に

 マジでこれしかなくなってきたぜ。